縞というと、粋だったりカジュアルなイメージがありますが、
コーディネートや柄合わせによっては、
縞でもこんなにエレガントに品よく着こなせるのね!
と気づかせてくれるのが、
『女が階段を上る時』(1960年、成瀬巳喜男監督)の高峰秀子さん。
本作で、高峰秀子さんは、主役として銀座のバーの雇われママを演じる一方で、
衣装もご自身で担当されています。
夕方、私は階段を上がるときが一番嫌だ。
しかし、上がってしまえば、別の世界の幕がひらく。
贅沢な香水、贅沢な着物、そして贅沢な男のオモチャ。
若くして夫を亡くし、やむなく水商売をしているママ。
その美貌ゆえに、お客様はやってくるけれど、媚びたり女を武器にしたりせず、
どこか冷めた目で見ている。
そんなクールなママには、縞のシックな着物がとてもよく似合います!
作中には、たくさんの縞の着物が出てきますが、
1960年の映画とは思えないくらい、都会的で洗練された装いでびっくり。
やってみたい!縞×無地の片身代わり
特に、上の片身代わりの縞の着物がすごくステキ!
細い縞と黒の無地を合わせているところが、色っぽいながらもカッコよく、
また黒のクラッチバックが絶妙です。
でも、片身代わりの着物をつくるには、反物が2つ必要なので、なかなかチャレンジしにくい。。
↓ 両面使えないかしら。
あるいは、切り売りしている木綿で、半反ずつ買ってもいいですね。
木綿なら1万円前後で片身代わりができるからリーズナブル♪
遠州木綿といえば縞のイメージですが、無地もきれいです。
ちなみに、片身代わりにもいくつかのパターンがあり、
衿も背中心で切り替えて左右で分けたり、
上前のおくみを下前の生地にしたり。
片身代わりというと、ド・ローラ節子さんがお召になっているのをよく拝見しますが、
節子さんは衿を左右で分けています。
やはり縞や無地、アニマル柄などのシンプルな生地を使っています。
着物は、洋服にはない色や柄が醍醐味ですが、
特に関東の都会では、派手な色柄ですと、行く所によっては浮いてしまうので、
シンプルな着物で、華やかに見せるテクニックやセンスを身につけたいものです。
装いにはその人の人間性が表れる
さて、私は高峰秀子さんのエッセイが大好きで、
何冊も読んでいますが(驚くほどの文才の持ち主!)
映画を見るのは実ははじめて。
この映画は、だいぶご本人に近いのではないかと思いました。
子役として小さい頃から働き、実の親ではない家族のもとで暮らし、
その家族の分も稼がなくてはいけなかった。
そして、金銭的な面倒はずっとついてまわり、女優の仕事を続けざるをえなかったのです。
ただ、映画のママと違い、高峰秀子さんは愛する伴侶と養子を得ています。
また、本作の衣装と同様、ふだんから黒やグレーなど、シンプルな装いを好んだという高峰さん。
おしゃれのコツは、飾り過ぎないこと、なにげなくあること。
人間どんなにとっかえひっかえ衣装ばかり着替えても、
それで美人に見えるわけではない。
要は、衣服という皮をはいだ中身の整理整頓をすることが
先決問題ではないかと思う。(『瓶の中』)
そして、外見からいくなら、衣服よりも、
まずは姿勢と歩き方をマスターするべきとのこと。
日本人の歩き方が、いかに貧相でみっともないかは、
西洋人とくらべればすぐにわかる。
先日もハワイの街を歩いていて、
向こうからひときわチンチクリンのガニマタが歩いてくるなと思ったら、
わが愛する夫・ドッコイその人であったのにはギョッとした。(『瓶の中』)
高峰さんは著書の中でご主人を夫ドッコイと呼んでいます。
センスのかたまり!
また、食器や家具などは好きなものを厳選して持ち、
余計なものは全力で排除したという、断捨離の達人でもあります。
時代の先の先を生きておられた本当に聡明な方。
知性やセンスは、生まれや学歴とは関係ないことを知らしめてくれます。
↓最後まで読んでいただきまして、ありがとうございます(^^)
クリックで応援していただけると嬉しいです。