夢二の絵から飛び出てきたような鬼嫁
栗島すみ子さん『淑女は何を忘れたか』

鬼嫁をもつ男性の嘆きがあちらこちらで聞こえる昨今。

本当につらく、離婚を考えている人もいれば、

鬼嫁の愚痴を言いながらも、なんだか幸せそうな男性もいますね。

一方で、頼りない夫、家事や育児を手伝わない夫に、日々イライラしている妻がかかえるストレスもはかりしれません。

鬼嫁を攻略したい男性、頼りない夫にイライラしている女性にぜひオススメなのが、小津安二郎監督の『淑女は何を忘れたか』(1937年)

当ブログでも何度となく紹介している小津監督の初期の作品です。

80年以上も前の映画にもかかわらず、りっぱな鬼嫁が登場します。

女性が強くなったから鬼嫁が増えたという説はウソかもしれません!

小津監督は庶民の日常を淡々と描くのが特徴的ですが、この映画は、めずらしく山の手の高級住宅地を舞台に、上流階級の人々をコメディタッチで描いています。

なぜこの作風で作り続けなかった?

と言いたくなるほど超絶おもしろいです!

U-NEXTの無料トライアルで『淑女は何を忘れたか』がご覧になれます。

妻に頭が上がらない大学教授の夫。

行きたくないゴルフも、妻に「行ってらっしゃいよ。運動しなきゃ毒よ」

といわれれば、逆らえず、無理やり出かける準備をさせられ、しかたなく教え子の家に泊らせてもらうことに。

鬼嫁攻略法1

そんな怖い鬼嫁を演じるのは、かつて「日本の恋人」ともいわれた日本映画初期の大スターである栗島すみ子さん。

この映画は栗島すみ子さんの引退作品で、調べたらこのとき35歳とのこと。
その若さでこの貫禄はスゴイです!

キーキーうるさい立派な鬼嫁を演じていますが、たたずまいはやはり「日本の恋人」。

まるで竹久夢二の絵の実写版みたいに、身のこなしや着物の着姿がくねっとしなやか。

存じ上げませんでしたが、日本舞踊水木流の家元だったんですね。
さすが、着崩れすら体にぴたりと吸いつくようで、乱れを感じません。

数万人といるお弟子さんの中には、淡島千景さんもいらっしゃるそうです。
この映画を見た後では、とても恐いお師匠さんだったんでしょうね~と思ってしまいます。

さて、ゴルフに行くとウソをついて教え子の家に泊ったことがばれてしまった夫。

キーキーせめたてる妻に、ついに夫はぴしゃりと一発!
鬼嫁の頬を叩いたのです。

「わしが黙っていればいい気になって」

静かになり、ふいっとその場から立ち去る妻。

やるじゃん!

と思ったのもつかのま、夫はしばらくして妻に謝りにいき、

ふてくされている妻の背後から、

「さっきはどうもすまなかった。とにかく殴るのはよくなかった。頭にきただろう。どうも大変よくなかった。ひとつ勘弁してくれ。すまなかった。気に留めんようにな」

と名謝罪。

実に和やかで朗らかで優しげで、これほど心地良い謝罪は聞いたことがありません。

機嫌を直した妻に、「風邪をひかんようにな」と言って自室に戻り、

暖炉にあたりながらニヤニヤが止まらない夫のなんと幸せそうなこと!

鬼嫁の夫

そして一部始終を見ている姪(桑野通子さん)がまた面白い。
(言い忘れましたが、この夫婦の様子は大阪から出てきた姪の視点で描かれています)

姪 「なんやおじさんその顔!おじさんから謝りに行くことないやないの。ちょっとファインプレーしたと思ったら。旦那さんはもっと威厳もたなあかん!」

叔父 「いや~あれはあれでいいんだよ。世の中には奥さんに威厳を示す人もいるけれど、あれはあんまりよくないよ。奥さんには花をもたせなくちゃいけないよ。奥様はね、旦那さんを押さえていると思っているのが良い気持ちなんだから。つまり逆手(ぎゃくて)だね

姪 「そうか、へぇ~逆手か。ええこと聞いた。うち覚いといたろ~」

一方、妻の方はというと・・・。

鬼嫁攻略法2

キーキーカマキリからニャンニャンにゃんこに。

山の手マダム達との会話。

マダムA 「いくつ叩かれたの?」

鬼嫁 「ひとつ」

マダムA「どこ?」

鬼嫁「ここんとこ」

マダムA「いきなり?」

鬼嫁 「うん」

マダムA「痛かった?」

鬼嫁「ううん」

マダムA「いいわね~。うちのなんかダメさ。いくらやったって向かってこないんだもん」

マダムB「あんた、またものすごい顔するんじゃない?」

マダムA「バカ!」

マダムB「カバ!」

そんなマダムA・Bのやりとりを、言葉少なにニコニコしながら聞いている鬼嫁がとってもかわいい。

山の手マダム達が集まったときの会話がめちゃめちゃ面白いのですが、文章では伝えきれないのがもどかしいです。

あと、衣装協力が三越で、マダムA(飯田蝶子さん)が冒頭でベルベットのステキな羽織を着ているのですが、それがとっても気になります。

姪の都会的なモガ(モダンガール)なファッションや言動も見ていて楽しい!

白黒映像ですが、内容も衣装もとてもオススメの映画です♪

ところで、生涯独身であった小津監督。

『淑女は・・・』を撮影したときは34歳くらい。

その年で夫婦の微妙な関係性を描けるって、やっぱり凄い観察力なんだな~と思いました。

ちょっと飽き気味だった小津作品ですが、こんな面白い映画があるなら、また他の映画も見てみようかなと思いました♪

また書きます♪

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